Creative First!

Kenichi AKI
安芸研一

CREATIVE DIRECTOR / COFFEE ROASTER
クリエーティブ・ディレクター / コーヒーロースター
1st–crack coffee roaster https://roaster.1st-crack.com

PROFILE
プロフィール

1956年12月09日、東京都、生まれ
1975年、都立日比谷高校卒
1980年、成蹊大学経済学部卒
1980年、株式会社 読売広告社 入社
2004年、株式会社 電通入社
2017年、株式会社 ファーストクラック設立
2018年、1st-crack coffee roaster 開業

読売広告社で24年間、電通で13年間、
広告を作る仕事をして来ました。

2016年末、定年を迎え、
2017年7月6日、株式会社ファーストクラックを
設立、独立しました。

いま広告の世界は、経済的飽和とデジタル化に
よって、大きな変化を余儀なくされています。

その昔は、非科学的とか言われた広告ですが、
現在は、様々な調査手法があり、リアルタイムに
その反応を数値化することさえ可能になりました。

そこに現れたのが「効率」という怪物です。

作家の村上春樹氏は「想像力の対極にあるものの
ひとつが、効率です。」と発言されていますが、
僕は「効率」の対極にあるものは「ココロ」では
ないか、と感じています。

「ココロ」というと、なんかちょっと怪しげですが、
「効率的な仕事」に対して「心ある仕事」といった
意味合いです。
企業の商品やサービスの実体や情報を、
それを必要とする人々に、的確に伝えるのが、
優れた広告の仕事だとすれば、
企業の商品やサービスを担っている方々の
計画や思いをそれを必要とする人々に、
強く印象に残る伝え方を、真剣に考え、検討し、
丁寧に実施すること。
それが「心ある広告の仕事」だと思います。

企業の商品やサービスとそれを必要とする人々と
をつなぐ広告活動は、長期的視野を必然としますし、
ど真ん中には、生身の人間がいます。
「効率の追求」の先に、素敵な未来や
新しい感動があるとは思えません。
結果を急ぐあまり短期的視野に陥り、
消耗戦に嵌り「心を失う」と危惧します。

ところで、社名の「ファーストクラック」とは、
珈琲焙煎用語で、珈琲を焙煎している時、
珈琲がついに「飲める」段階に変わるときに起きる
化学反応で、日本語では「イチハゼ」と言います。

それは、珈琲豆内部の水分が蒸発して外へ出る際に
細胞膜を破壊する現象で、パチパチと音をたてて、
豆のサイズが大きくなり、豊かな香りを漂わせます。

珈琲の焙煎においては、生豆投入から
ファーストクラックに至るまでのプロセスと、
ファーストクラック後180秒間が、
最もクリエーティブな瞬間です。
その珈琲豆の味わいと風味は、そこで決まります。

この「ファーストクラック」という言葉を知った
瞬間、新しい会社の名前にしようと思いました。

何よりも「ファーストクラック」という現象が、
劇的で、ドキドキするからが、その一番の理由ですが、
飲用できない珈琲生豆を「飲める」ようにする
化学反応が、計画性と直感性を必要とする
広告クリエーティブの仕事と
似ているかもしれないと思ったから
でもあります。

同時に、独立するという自分を珈琲生豆になぞらえ
新たな「ファーストクラック」を起こそうという、
意思表明みたいなものかもしれません。

好きな言葉に
「幸運は準備された心に舞い降りる。パスツール」
があります。
準備は、整いました。
新しい火を、心に点火しようと思います。

株式会社ファーストクラック
クリエーティブディレクター
安芸研一